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動いてみたら、いいことしか起きない。 刺繍作家・小菅くみさん(インタビュー前編) 「きもの、着てみませんか?」 vol.1-2

動いてみたら、いいことしか起きない。 刺繍作家・小菅くみさん(インタビュー前編) 「きもの、着てみませんか?」 vol.1-2

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ユーモラスなモチーフの作品で人気の刺繍作家・小菅くみさん。vol.1-1での、薬真寺 香さんスタイリングによる浴衣姿も好評でした。今回は、”好き”を仕事にしていく上で小菅さんがどんなことを大切にされているのか、お話を伺いました。

”浴衣×ハット”で夏の都会へ feat. 刺繍作家・小菅くみ「きもの、着てみませんか?」 vol.1-1

元”浅草振袖さん”の着物スタイリスト、薬真寺 香さんのスタイリング新連載第一弾!ユーモラスなモチーフの作品で人気の刺繍作家・小菅くみさんをお招きし、夏の都会によく似合う、涼やかでチャーミングな浴衣コーディネートを提案しました。

刺繍をはじめたのは、難病があったから

前回、爽やかでチャーミングな浴衣姿を披露してくださった、刺繍作家・小菅くみさん。

自身の刺繍ブランド〈EHEHE(エヘヘ)〉での作品制作を中心に、多くの企業とコラボレーションを行ったり、7/16には初の書籍発売と大活躍。

(記事最後に、書籍プレゼント企画もあります!)

浴衣姿で刺繍を刺す、小菅くみさん。
発売されたばかりの刺繍作家・小菅くみさんの書籍。

”好き”を仕事にしていく上で、小菅さんはどんなことを大切にされているのでしょうか。
小菅さんの刺繍作品も飾られており、以前から常連という『鮨大前』でお話を伺いました。

鮮やかなブルーののれんに映える浴衣姿。

元々は会社員だった小菅さんが刺繍をはじめたきっかけは、病気にかかったことといいます。

「難病になって入院しなきゃいけなくなったときに、ベッドの上でできることを探して手に取ったのが刺繍でした。道具も少なくて周りに迷惑がかからないなと。
元々つくることが好きだったことや、祖母や母が縫物をしていたのを間近に見ていた影響もあったと思います」

浴衣姿で刺繍を刺す小菅くみさんの手元。

最初に縫ったのは、花や丸、三角といったよくある模様たち。

そこから徐々にはまっていって、自分で洋服に柄を縫ったり、友達の子供の洋服にワンポイントを入れてあげたり、アレンジを効かせていって。

「最初は仕事にしようなんて考えていませんでした。でも、友達が私の刺繍をすごく褒めてくれて「仕事にした方がいいよ」って、展示会場まで押さえてお膳立てしてくれたんです。
そこで作品が売れたことが自信になって、仕事につながっていきました」

型にはまっていなくていい

刺繍は独学ではじめ、習ったわけではないという小菅さん。

「ほとんど自己流です。でもあとから、昔からあるステッチ通りにやってることに気づいたりもしました。
塗り絵って習わないけど、みんなできるじゃないですか。それと同じで、糸を絵の具として、針を進めていけば必ず何かはできる。刺繍のさし方に必ずしも正解があると思っていなくて。やり方にとらわれないでも、できちゃうんです。

私は、型にはまっているのは、好きじゃない。つまらないなと思ってしまって、マニュアル通りができないんです。
料理も好きなんですけど、レシピを見るのはあまり好きではなくて、自己流でつくってみて意外に美味しいものができた!という発見が楽しいなと思います。
自分で考えてやってみるのが好きですね。」

取材協力いただいた「鮨大前」さんの代名詞である鯖の握りを刺繍した小菅さんの作品。
取材協力いただいた「鮨大前」さんの代名詞・鯖の握りを刺繍した小菅さんの作品

小菅さんのクリエイティビティから生み出される繊細な刺繍作品たち。一作品つくるのには、夜も作業して2〜3日かかるのだそう。

「もちろん家でつくっている時間もありますが、桜が咲いている時期なら公園で一人花見しながら縫ったり、締め切り前集中したいときはカフェをはしごしながらや、移動中に縫ったりもしています。刺繍は手軽でどこでもできてありがたいです」

「ああ面白かった!」と言って死にたい

小菅さんは作品制作が忙しいなかでも、人との関わりあい、そして新しいものに触れることを大事にしているという。

「周りの面白い人のことをよく見てみると、人に勧められたものをどんどん試したり、取り入れることが上手だなって気がついたんです。だから私も、意識して動くようにしています。
私は、好きなことをできていて羨ましいって言われることもあるんですけど、そんな時は”動いてみては?”って思います。動かないでいると、つまらなくなってしまう」

浴衣姿で刺繍を刺す小菅さん。

「宮藤官九郎さんの『ごめんね青春!』(2014年)というドラマで、主人公のお母さんが「ああ、面白かった!」って言って死ぬのを見て、最高だな、私もそう死にたいと思っているんです。
だから、好奇心は大事にしています。動いてみたら世界は変わると思っているので」

2021年7月には東京、8月には京都の「ほぼ日のtobichi」で、書籍発売に合わせた展示会を行っていますが、これも人との関わり合いがきっかけになっているそう。

刺繍作家・小菅くみさんが浴衣で銀座へ。

「お仕事でジャムのレシピ開発に携わっていたことがきっかけなんです。
ジャムをつくることになったのも、突然「ジャム煮れる?」って友達から聞かれて「煮れますよ」と答えたら、次の日に大量の果物と冷凍庫が家に届いて、いつの間にかレシピ開発していました。

やってみたことでさらに人とのつながりが広がって、またやってみたいことが生まれて…そういうことの積み重ねが、今の自分をつくっているかなと思います。

動いてみると、自分に向いているものがわかったり、逆に自分に足りないものも見えてきたり、いいことしか起きないです」

小菅さんの作品といえば、愛くるしいユーモア溢れるモチーフですが、その作品にも人との関わりが影響しています。

小菅くみさんの刺繍作品。タイトル「犬ブローチ」
小菅くみ『犬ブローチ』
小菅くみさんの刺繍作品。タイトル「国民のアイドル」。
小菅くみ『国民のアイドル』

「モチーフを思いつくのは、人と会話がきっかけになることが多いですね。
面白いよ!って言われて観た映画のシーンや主人公を刺繍してみようと思ったり。人との関わりが着想を与えてくれることが多いですね。

見ていて楽しくて、笑えたり、気分が上がるものを作りたいと思いながらやっています」

「好き」を増やすから、好きなことが続けられる

みるみるうちに形作られていく刺繍。配色やモチーフ、配置に小菅さんらしさが溢れる。
インタビュー中、みるみるうちに形作られていく刺繍

好きなことを仕事にすることは憧れる人が多い反面、逃げ場がなくなってしまう難しさもあるのではないでしょうか。

「”好き”をもう一つ用意しておくといいかなと思います。仕事にすると、好きではないこともセットでやらなくちゃいけなかったり、逃げ場がなくなってしまったりするので。私も刺繍だけじゃなくて、楽しいことを増やしていくように意識しています。

私はサウナが好きなので、リフレッシュしたいときにはサウナに行きます。ちょっと刺繍から離れる時間を作ると、また戻ってこられる。打ち合わせや展示の帰りに、ご褒美にサウナに寄ったりするんです。
最近はワーキングスペースが付いているサウナ室もあるので、縫い物をして、サウナでリフレッシュして…を繰り返している日もあります。

あとは、仕事を自分の好きな方向に寄せていくっていうことも最近大事だなと思っています。「こっちの方が自分らしい」と自分の意見を伝えて寄せていったり、提案することも大事にしています」

小さな達成感を味わえる刺繍にもチャレンジしてほしい

取材協力いただいた「鮨大前」さんの前で。

刺繍は道具も少なく、気軽にはじめられる趣味のひとつ。
7/16に発売された小菅さんの書籍『小菅くみの刺繍 どうぶつ・たべもの・ひと』の中には、刺繍の図案や縫い方の解説もあります。

「例えば15分でも、小さなモチーフなら一個できちゃいます。大作じゃなくったって、完成したときには小さな達成感が味わえる。
それに、夢中で一針一針縫い進めていると、気持ちが整ってくるんです。精神的にもプラスなことがたくさんあると思っています。
刺繍に興味を持ったら、ぜひ試してみてほしいなと思います」

~ インタビュー後編(近日公開予定)につづく ~

◆ 読者プレゼント ◆

さて、ここで楽しいお知らせが…
ゲスト・小菅くみさんの初の書籍『小菅くみの刺繍 どうぶつ・たべもの・ひと』(文藝春秋)を、抽選で2名の方にプレゼント!

小菅くみの刺繍

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※応募期間:2021年8月25日(水)まで

浴衣
『着物 中や』
kimono_nakaya

ハット
『Saravah』
帽子デザイナー兼帽子職人・坂口直顕さんによる、2013年にスタートした日本のハットブランド。クラシカルでいて瑞々しく、マニッシュでありながら女性らしい柔らかさが漂う。美しいフォルムと厳選された素材、流行り廃りに左右されない確かな魅力で支持されている。
saravah_hat

帯留め
ガラス作家 福士遥さん
茨城県出身、武蔵野美術大学 工芸工業デザイン学科 卒業。その後同大学 ガラス研究室 助手を勤め、現在は東京で制作を行う。個展や合同展を多数開催。主にパート・ド・ヴェールという技法を使い、くらしや壁面をいろどるガラス作品を制作。
fukushiharuka

*三分紐、下駄はスタイリスト私物

構成・文/青葉鈴 greenery_aoba
撮影/坂本陽 minami.camera 

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